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旅に出ています。 

2006年12月11日 ()
住み慣れた横浜を離れて旅に出ている途中の(予定)の二十六ですごきげんよう。お金があまりなかったので新幹線は使わず高速バスです(´・ω・`)

さて、今日は予定通りであれば高速バスに乗って目的地に着いている筈です。この日記は昨晩のうちにFC2のタイマー投稿機能を使って書かれています。

けれどもまだ今日という日を過ごしていないので書くことが無い……

という訳で例のカフェの噂話でお茶を濁すことにしました。
出先でもカフェにいけるといいなぁ、と思っております。

では追記の中にカフェの噂話。
なんかお客さんからのお話が聞けたようですよ?

「HYSTERICAL CAFFE」 -The other side of door- 二十六-13


 ドアを開ける。
 外と中とをただ仕切りだけのドアの向こうにその空間は今日も存在していた。
「いらっしゃいませ」
 いつもの様に席に案内される。案内される席はいつも決まってはいないが、大体は窓際だ。ここの店の構造上、窓際の席が多いせいもあるだろうが。
 私は前を歩く店員の背中を見た。ここの店員は決して客に媚びない。けれども愛想がない訳ではない。ただ、余計な事を喋らないだけなのだ。
 椅子を引いてもらい席に着き、お絞りと水を受け取る。外は良く晴れていてテーブルには光が溢れているというのに何故か眩しいと思ったことは一度もない。最近、それは微妙に調整された調光装置のせいだと気付いた。
「スペシャリテがあったら教えて欲しい」
 丁度季節の変わり目である今、新しいメニューが出始めているかもしれないと思い、私は私を席に案内した店員に尋ねた。その黒目がちな、私が「中くらいの猫」と密に呼んでいる店員は少しも考えることなく答える。
「ドリンクでは春の新作と致しまして雪解けをイメージしたこちらがただ今の御勧めとなっております。フードでは春野菜を使ったパスタをクリームソースとオイルソースで二種類ご用意させて頂いておりまして、特別春のスペシャリテという訳ではないのですが今月からメニューに加わったこちらのチキンソテープッタネスカソースもご好評頂いております」
 聞き取りやすい滑らかで短い解説と共に差し出されたメニューにはそのスペシャリテ達の姿と名前があった。
「成程」
「……お客様にはこちらの春野菜のペペロンチーノがお勧めかと思われます」
 短い沈黙の後、「中くらいの猫」はそう付け加えた。
「ペペロンチーノ?」
「はい、筍、絹さや、アスパラガス、新玉ねぎ、春キャベツなど野菜をふんだんに使い、アンチョビで味にアクセントを付けた今シーズンお勧めの一皿です」
 実際、私はオイルベースのパスタが好きだった。けれどもそれを店員に話したことはもちろん、ここを一緒に訪れた友人達にも話したことは一度もない。
「何故それを私に?」
「いつもペペロンチーノやボンゴレビアンコなどをご注文されるのでクリームソースよりオイルソースがお好きなのかと思いまして」
 だから言っただけだ、当然だろう? そういう顔で「中くらいの猫」は答えた。
「なら、それとこのエスプレッソベースの春の新作を」
「ドリンクは食前でよろしいでしょうか」
 食後か食前か、ではなく食前で良いかどうかと聞く「中くらいの猫」と、私は目を合わせて一瞬だけ笑みを交わした。
「食前で」
「承知致しました」
 真っ直ぐに店の奥のパントリーに向かっていく「中くらいの猫」に私は尻尾の幻を見た。私は食事と一緒にオーダーした飲み物を「食前」以外、持ってこさせた事が無い。
 ここの店の店員は余計なことを喋らない。けれども良い仕事をする。

 席には沈黙が訪れた。私はこの沈黙を愛していた。静寂ではなく、沈黙を。
 店の中は音が絶えない。しかしそれは沈黙を壊す音ではないのだ。沈黙を壊す音と言うのはもっと不快でエネルギーを消費するものなのだ。
 私は数回、丁度カフェブームと言うものの真っ最中に出来たと思われる新進のカフェに通ってみた。
 新しく出来るカフェ達は全て居心地の良さを競うように追求していた。ソファを置いてみたりやたらと窓を広くしてみたり客に友達感覚で話しかけてみたり、と。
 本来カフェというものは本場欧州では社交場的な側面を持っているという。けれども私はオーダーの後の、カップに口を付ける時の、空になった皿とカップを見つめながらの、特に何をする訳でもなく窓の外や店内を眺める時の、その沈黙を愛した。そしてその新進のカフェの中にその沈黙を壊さずにいてくれるカフェは残念ながら無かった。
 「中くらいの猫」がバーカウンターの横でトレンチを持って待っているのが目に入った。私が心内で「のっぽの猫」と呼んでいるバリスタからカップを受け取っている。「のっぽの猫」はお世辞にも沈着冷静とは言えないが、丁寧な一杯を入れる良い職人だと私は思っている。
「お待たせ致しました」
 テーブルの上に置かれた春の新作はエスプレッソの上にホイップクリーム、更にその上に削ったホワイトチョコレートを山の様にふわりと盛り、ミントの葉をあしらった、まさに雪解けといった具合の一杯だった。そのカップの上の春に口をつけて間も無く、パスタが運ばれてきた。
 皿の上とカップがすっかり空になり、私は食後の沈黙を存分に楽しんだ。途中皿を下げに「中くらいの猫」が来たが、この猫は沈黙を壊さない術を知っている。
 私はこの店で見る二度目の春に、愛する沈黙と共に挨拶をした。

 「~円になります」
 キャッシャーには人が居なかったのか、「のっぽの猫」が立っていた。そう言えば声を聞くのは初めてな気がする。見た目より声が高い事が意外だった。
「春の新作、美味しかった」
「! ……ありがとうございます」
 「のっぽの猫」は少しはにかみ、お釣りを私の手の上に載せる。
「いつもご来店ありがとうございます。春の新作はまだ未掲載のものがあるのでそちらもメニューに載ったらどうぞお試し下さい」
「そうさせてもらおう」
 「のっぽの猫」はそれ以上は喋らず、ただ「ありがとうございました」と言ってお辞儀をした。

 私は思い出した。
 新進のカフェの中にはこの店よりも美味しい食事や珈琲を出す店もあった。非常に愛想の良い店員も大勢いたし、座り心地の良い椅子を揃えたカフェもあったという事を。
 けれども私はこの店以上に好ましいと思った店だけは思い出せなかった。
 食事好きが高じて都内、近県の様々なカフェを巡ったし、データベースも作った筈だったのだが。
「まぁ、いいか」
 あの店があそこに存在し続ける限り、私の沈黙は守られるのだから。
 私は背広の上着を脱いで肩に担ぎ、沈黙することが許されない職場へと、歩みを進めた。
 あの店でとる遅めのランチは一日の前半と後半を分けるボーダーラインだ。そこに愛する沈黙を挟める私はきっと幸せなんだろう……



 「あの人いつもランチにいらっしゃるよね」
 バリスタがカップを下げてきたウェイターに話しかける。もうすぐ三時。ティータイムが、始まる。
「ああ」
 次のオーダーをチェックしながらウェイターは短く答える。さっきまでメニューの差し替えをアルバイト達に指示していたのだがそれも予定通り完了する見通しが立ったのでバリスタを手伝いに来たのだ。
「春の新作美味しかったって」
「そりゃ良かった」
「常連さん……って事になるのかな?」
「かもな」
 ガシャコンッ!
 厨房から食器洗い機のドアを開ける音が聞こえる。
「常連でも一見さんでも」
「「「出すカップと皿は変らない」」」
 三人の声が重なった。
「そんなの基本だろ?」
 ウェイターとバリスタが振り向くとそこには休憩室にいる筈のオーナーの姿。
「まぁ」
「そうですね」
「だろ、特別なことじゃないさ」
 来店されたお客様には等しく精一杯を提供しなさい。
 随分と前、この店が開いた時にオーナーが口にした言葉だ。後から聞いた話ではどこかの本で読んだ言葉を流用したらしいが。
「で、そろそろティータイムだね。バリスタ大丈夫?」
「まぁ、なんとか」
「ウェイターは?」
「大丈夫です……多分」
 いつも通りの受け答えに満足したオーナーは張り切って厨房に戻って行った。
「オレンジアイスティーが必要だね」
「ああ、あの張り切り様じゃ、2時間と持たないな」
 着替えたらしい、オーナーの真新しいコックコートの背中を見送って二匹の猫はオレンジアイスティーを四人分淹れ始めた。

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[2006.12.11(Mon) 22:30] [日々の出来事]小話有Trackback(0) | Comments(0)
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